商業施設のための「DOOH(デジタル屋外広告)来店計測」入門
「セールもイベントも告知したのに、屋外広告が本当に集客につながったのか分からない」——商業施設の販促をご担当されていると、一度はこう感じたことがあるのではないでしょうか。大きなビジョンに広告を出せば、多くの人の目に触れているはずです。しかし「見られた」ことと「来店につながった」ことの間には、大きな溝があります。
この溝を埋めるのが、DOOH(Digital Out Of Home:デジタル技術を活用した屋外広告)の来店計測です。広告に接触した人全体で、その後どのくらい来店の傾向が見られたのか。そして、来店した層にはどんな特性があるのか。この2つが統計的に見えるようになると、次の告知やイベントの打ち手が変わります。
本記事では、DOOHを出す商業施設の立場から、DOOH来店計測の考え方と仕組みをやさしく整理します。
1.商業施設のマーケティング施策として、DOOHが効く理由
まず押さえておきたいのは、DOOHが商業施設の集客施策として非常に相性が良いという点です。とりわけDOOHは、従来の紙の看板やポスターにはなかった柔軟さを持っています。
1-1.セール・イベント告知、施設のアプリの告知に使える
商業施設のマーケティングには、さまざまな目的があります。日常的な集客の底上げ、季節のセールやポップアップイベントの集客、そして施設独自のアプリやポイントサービスの認知拡大などです。DOOHは、これらの目的に幅広く応えられます。
たとえば週末限定セールなら、施設周辺のビジョンにセール情報を集中的に配信できます。期間限定のイベントなら、開催直前に告知を強めることも可能です。施設アプリのダウンロード促進のように「まず存在を知ってもらいたい」施策でも、人通りの多い場所の大型サイネージは強い味方になります。紙の広告のように貼り替えの手間がなく、訴求したい内容をタイミングよく届けられるのがDOOHの利点です。
1-2.DOOHならではの強み(柔軟な配信・高視認性+音声・広告への好感度)
DOOHには、商業施設の販促にうれしい特性が3つあります。
1つ目は、柔軟な配信ができることです。天気や曜日、エリアに応じて配信を最適化したり、クリエイティブを差し替えたりできます。「雨の日は屋内施設への誘導を強める」といった運用も現実的です。
2つ目は、高い視認性と音声による訴求力です。大型のデジタルサイネージは、動画と音声を組み合わせることで記憶に残りやすい広告体験を生みます。移動中の人の目にも自然に入り、強い印象を残せます。
3つ目は、広告への好感度が比較的高いことです。Z世代(18〜27歳)を対象とした調査では、屋外ビジョン広告を「不快に感じる(とても+やや)」と答えた人は29.9%にとどまり、動画広告など他の広告形態に比べて最も低い水準でした。ネット広告の「またこの広告か」という広告疲れが指摘されるなか、DOOHはブランドの好感度を保ちながら繰り返し接触できる媒体だといえます。
出典:株式会社ICA
【Z世代は広告を「スキップ」する?】広告タイプ別の"不快度"から見えた、Z世代の価値観に受け入れられやすい広告とは
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000091370.html
2.DOOHの“あるある課題”――「本当に来店につながったのか分からない」
ここまで読むと、DOOHは商業施設にとって理想的な施策に思えます。ところが、実際に運用してみると多くの担当者が同じ壁にぶつかります。それが「効果が見えない」という課題です。
DOOHは、掲出期間と掲出場所を決めて出稿するのが基本です。どのくらいの人がその広告に接触し、そのうちどの程度が来店の傾向を示したのかは、はっきりとは分かりません。手応えは「なんとなく人が増えた気がする」という感覚に頼りがちです。
この状態では、次の意思決定が難しくなります。来期も同じ場所に出すべきか、別のエリアに変えるべきか。セール告知とイベント告知でどちらのクリエイティブが効いたのか。判断の材料がないまま、「昨年もやったから」という理由で出稿を続けてしまう——これがDOOHの“あるある課題”です。
Web広告であれば、表示回数もクリックも購入も数字で追えます。同じような効果の可視化がDOOHでは難しかったために、DOOHだけが効果検証の外に置かれてきました。しかし近年は、この状況が大きく変わりつつあります。
3.だからこそ知るべき「来店した人の数と属性情報」
DOOHの効果を判断するために、商業施設が本当に知りたいのは何でしょうか。突き詰めると、次の2つに集約されます。「広告接触後にどのくらい来店の傾向があったのか」と「来店した人たちの層にどんな特性があるのか」です。
3-1.広告接触後、どれだけ来店につながったか(来店傾向の把握)
商業施設にとって、最終的なゴールは来店です。どれだけ多くの人にビジョンが表示されても、来店の傾向として表れなければ集客施策としての価値は測りにくいままです。
だからこそ、広告の表示回数だけでなく「広告に接触した人全体で、どの程度が来店につながったか」を推計として把握することが重要になります。この来店傾向が分かれば、施策ごとの効果を同じ基準で比べられます。「今回のセール告知は前回より来店傾向への貢献が大きかった」といった振り返りが、感覚ではなく数値でできるようになります。
3-2.どんな層が来ているか(来店層の統計的な把握)
もう1つ欠かせないのが、来店した人たちの層の特性、つまりどんな人物像が多いのかという属性情報です。同じ規模の来店でも、その内訳が20代の女性中心なのか、40代のファミリー層中心なのかで、次に打つべき施策はまったく変わります。
たとえば来店層に「郊外に住み、休日に友人とショッピングを楽しむ20代女性」が多い傾向が見えれば、その層に響くブランドの誘致やイベント企画、SNSでの発信が検討できます。逆に想定と違う層が多ければ、ターゲット設定そのものを見直すきっかけになります。来店層の傾向が見えることは、告知の精度を一段引き上げることに直結するのです。
では、この「来店傾向」と「来店層の特性」を、DOOHで実際にどう把握するのでしょうか。ここで役立つのが、通信キャリアの位置情報を活用した統計的な分析です。
4.DOOHの来店計測でわかる4つのこと
DOOHの効果計測をするソリューションのひとつに、シナラシステムズジャパンが提供するソリューションがあります。
特徴は、通信キャリアの位置情報データを用いた統計的な分析であることです。アプリのインストールや利用状況に依存せず、広告接触後の行動傾向を統計的に捉えられます。個々の契約者を特定する情報を用いるものではなく、プライバシーに配慮した仕組みである点も、商業施設として安心できるポイントです。
この分析で分かることは、大きく4つあります。前章で触れた「来店傾向」と「来店層の特性」が、それぞれ①と③として統計的に把握できると考えると分かりやすいでしょう。
4-1.①店舗への来店傾向の把握
広告配信データと位置情報データを統計的に組み合わせ、広告接触と来店傾向の関係性を分析します。前章でお話しした「広告接触後にどれだけ来店につながったか」に、これが推計として答えを出します。DOOHが集客にどうつながったかを、来店傾向という指標で把握できるのです。
4-2.②Webサイト来訪傾向の把握
広告接触者のその後のWebサイト来訪の傾向を、集計データで把握します。トップページへの来訪だけでなく、予約完了や申し込み完了といったコンバージョンページへの到達傾向まで分析できます。アプリのダウンロードページや特設サイトへの誘導効果を見たいときにも役立ちます。
4-3.③来店層の属性分析(ペルソナ)
広告に接触した層や、来店・来訪につながった層が、統計的にどのような属性だったのかを分析します。性年代や居住地、関心といった統計的なデータに基づいて、来店層の人物像を描けます。前章の「どんな層が来ているか」に対応する部分で、次の告知やイベント設計の土台になります。
4-4.④ブランドリフト調査
DOOHに接触した層と接触していない層を分け、アンケートによって認知や好意度、来店意向の違いを比較します。来店の手前にある「気持ちの変化」を捉える調査です。認知拡大やアプリ告知のように、すぐの来店だけでは測りきれない施策の効果を評価するのに向いています。
この4つを組み合わせることで、DOOHを「見られたかどうか」ではなく、「どんな層に届き、その後どのような行動傾向につながったか」という視点で統計的に捉えられるようになります。
5.可視化した結果を“次の告知・イベント”にどう活かすか
来店傾向と来店層の特性が見えることの本当の価値は、次の一手につなげられる点にあります。分析は、あくまで振り返りとPDCAの出発点です。
例えば、来店傾向への貢献が大きかった配信エリアやクリエイティブが分かれば、次回のセール告知ではそこに予算を寄せられます。来店層の傾向が明確になれば、その層が集まりやすい時間帯や曜日にイベントを設計する、という判断もできます。「どのビジョンが来店傾向に効いたか」を基準に、掲出面そのものを見直すリプランニングも可能です。
さらに、この来店傾向という物差しはDOOHだけのものではありません。同じ仕組みで、Web広告(検索広告やSNS広告など)の接触から来店傾向までを統計的に分析できます。商業施設では、DOOHとWeb広告を同時に展開しているケースが多いはずです。それぞれの施策が来店傾向にどうつながったのかを、同じ「来店」という基準で横並びに比較できることは、限られた販促予算を最適に配分するうえで大きな武器になります。
表示回数やクリック数といった中間指標だけでなく、来店傾向(推計値)を軸に施策を回していく。これにより、DOOHを継続的な集客装置へと近づけ、来店数の最大化に向けた改善が期待できます。
6.まとめ|DOOHを「出して終わり」にしない
最後に、本記事の要点を振り返ります。
DOOHは、セール・イベント告知、アプリ告知など、商業施設のマーケティングに幅広く効く施策である。
一方で「本当に来店につながったか分からない」という課題があり、効果検証が難しかった。
だからこそ、広告接触後の「来店傾向」と「来店層の特性」を統計的に把握することが重要になる。
通信キャリアの位置情報を使ったDOOH来店計測なら、来店傾向・Web来訪傾向・来店層の属性・ブランドリフトの4つを統計的に可視化できる。
可視化した結果を次の告知やイベント、媒体選定に活かすことで、DOOHは「出して終わり」から「集客が回る施策」へ近づく。
DOOHの効果を来店傾向で可視化する具体的な考え方と、商業施設での活用イメージは、資料「デジタル屋外広告(DOOH)による売上貢献の可視化とは」で詳しくご紹介しています。自社の集客に来店計測をどう取り入れられるか検討されている商業施設のご担当者様は、ぜひ以下より資料をダウンロードのうえ、お役立てください。